大晦日に、ハッキリ言ってロクでもない「格闘技」をシコタマ見せられ(いや、だったら見なきゃいいんだけども)、さらにこの1月4日の某ドーム球場での某格闘技興行上においてさらに輪をかけてロクでもないウワサが飛び交ってたりするのを知っちゃったせいで、なんだか格闘競技に対する不信感みたいなものが芽生えてしまっております。
こんなときは、「ロクでもなく」ない無い格闘競技を観るに限る!というわけで、大昔にエアチェックしたビデオを引っ張り出しました。
まずはハーンズの逮捕(1/4付当サイト記事参照)の報をきっかけに、レナードVSハーンズ戦…いや、これはホントにスバラしい。もはや芸術です。
ハーンズは190cmくらいある、ありていに言って「巨人」(ヘビー級のタイソンより高い!)なのですが、そのスピードはもはやフライ級レベル。
しかも身長以上あるリーチを利したパンチが、上下左右からボコボコ飛んで来る。しかもしかもどのパンチもシャレにならないくらい強い!…「石のコブシ」と呼ばれたハードパンチャーであるデュランとの戦いを経てきているレナードの表情が恐怖に歪んでいますよ。ビデオをお持ちの皆さんは、いま一度じっくりご覧下さい。
ちなみに上記「上下左右」の「上」がいわゆるチョッピング・ライト、「下」がフリッカー・ジャブだったりします。
ボクシングの連打・コンビネーションブローの基本形は、左ジャブー右ストレート・左フック、というものです。今はもうこういう古風な定型はそれほど重視されてないような気もしますが、いちおうこういう基本形があることはあるはず。
この場合の3種のパンチは、基本的に全て地面と水平な軌道上で打たれます。
これに対してハーンズの(レナードもそうですが)「連打」は、下から突き上げる「フリッカー・ジャブ」が来たかと思えば、自分の肩越しにチョッピング・ライトが打ち下ろされる、といった具合に、まさに上下左右、縦横無尽に、しかも極めて正確に飛んできます。
こんなに対戦相手にとってオソロしいことは無いはずです。
この「上下左右」で思い出すのが、リカルド・ロペス。
最軽量級のストロー級(今はミニマム級と呼称するらしい)の王者です。
私の好きな大橋秀行を5RでKOして戴冠、その後22回それを防衛し、結局無配のまま引退した、という、夢のようなチャンプでした。
大橋も、所属のヨネクラジム会長によれば「150年に一人」の天才ボクサーなはずなのですが、ロペスにはハッキリ言って残念ながら歯が立ちませんでした(それでも、あのロペスに強打をクリーンヒットさせ、一度はグラつかせたんだからやっぱし大橋はスゴい)。
私の記憶が確かならば、大橋からタイトルを強奪した試合、そのフィニッシュは左~右のストレート2連打だったはず。
正確に言うと、左はロングの左アッパーで、右はかなり大胆な打ちおろしの右ストレートでした。
…そもそもサウスポーでもない選手による「ロング(遠距離から)の左アッパー」など、そうそう観られるもんじゃないのでよく覚えてます。
で、それに間髪入らずに、叩き潰すような右ストレートが続く…確か後楽園ホールでの試合だったと思うのですが、会場が静まり返ってたように記憶してます。
ボクシング会場が試合中・後に静まり返ってしまう理由には、いくつか類型を見出せます。
1・ヒマな試合の場合(これが圧倒的に多い)
2・良い意味で“ああ、こりゃモノが違う!”という場面
(ワレワレはスゴい選手を生で観ることができている!という喜びによる)
3・良い意味で“ああ、こりゃモノが違う!”という場面
(こんな試合組みやがって!という怒りによる)
などなど。
大橋VSロペス戦の「静まり」は、明らかな「2」でした。
その後ロペスがウルトラスーパーチャンプとして10年近く王座に君臨するのを観るにつけ、
「ああ、オレもあの時、(後楽園)ホールに行けばよかった…」
と、何度思ったことか。
会場の「静まり」で印象的だったのは…これは上記中の「2」の亜流とでもいうべきか…高橋ナオトVS朴鐘弼戦。
これは、高橋ナオトのラストファイトです。
高橋ナオト…当サイト管理人的には「高橋直人」の方がしっくりくるのですが、今里光男を破って日本バンタム王座についた頃の高橋は、若さと才能でキラキラ輝いてました。
巧みなカウンター狙いの技は練習して出来るレベルのものではなかった、と思います。
高橋といえば、なにしろVSマーク堀越戦。
これはおそらく、全ての日本タイトルマッチの中でも確実にベスト10に入る名勝負なはずです。
ダウンの応酬の末に逆転KO勝ち、という、老若男女誰が見ても「堪能」できる、ホントに名勝負だったのですが、今思うと、ああいう試合たちが高橋の選手寿命を縮めてしまったんだな、と。
VS朴鐘弼戦はそんな高橋の、VSノリ・ジョッキージム戦の敗北からの再起第2戦でした。
このノリ戦、第一戦は大逆転KO勝ちで、そんな試合内容に不満な高橋陣営がわざわざ組んだ「雪辱戦」だったのですが、ここでは高橋は判定で惨敗。
捲土重来を期しての再起第2戦目だったわけです。
・・・が、結果は、いいところなく、というか、観るも無残なKO負け。
タンカで退場する高橋を見送る会場は、それこそ葬式のようにシーンと静まり返っていました。
・・・まだ続く、ような気がする。