去年の秋口、ちょっと微妙にヒマだった時期があったので、文字通りヒマ潰しに「チャット」なるものにチャレンジしてみたんです。
チャットそのものは経験がありました。
ただ、今までやったことのあるのは、大抵まず何らかのテーマにおけるサイトがあり、そのコンテンツの一部として存在しているものでした。
今回挑戦を思い立ったのはそういうんじゃなく、ただ単にチャットのみのサイト。
コンテンツの全てがチャットである、というやつです。
何らかのテーマがあり、それに対してチャットという「メディア」を用いて何かする・・・たとえば議論する、また例えば情報交換する、というのではなく、「チャットのためのチャット」。
そもそも「チャット」というシステムとは、それ自体のみで存在し得る・稼動し得るものなのかどうか。
「チャットのためのチャット」なんてものが、果たしてちゃんと機能しているものなのか。
この辺に非常な興味を覚え、いざ突撃したのでした。
結論から言うと、もう思いっきり、しっかりとそれは存在し且つ稼動していました。
それどころか、連日大賑わい、そのサイトには40ほどのチャットが(ほぼ無作為に!)存在しているのですが、とんでもない早朝・深夜を除いて、常に3~30(!)人もの参加者が集っていました。
もはやフル稼働です。
チャットしか無いサイトであるにも関わらず、このサイトのトータルアクセス/日は、約10000HIT。
ほぼ毎日、のべ1万人もの人が、ただ単にチャットをするって事のみの為にこのサイトに訪れているわけです。
・・・ほぼ無作為にと書きましたが、この40ほどのチャットには、一応それぞれごとにテーマが与えられています。
悩み事を打ち明けたり相談したい人のための「悩み事チャット」、
学校の話題をするための「学校チャット」
この他、居住地の別による「地域別チャット」や「年齢・世代別チャット」などなどがありました。
こういったテーマが与えられてはいるものの、例えば「地域別チャット」で各々の地域情報が語られたりしてるわけではなく、どこに「入室」してもそこで展開されている話題はいっしょではありましたが。
まず、当サイト管理人はもういいトシをしたオッサンであるので、とりあえず「30才代以上チャット」ってとこに入りました。
「入室する」のボタンを押し、入室すると、もう既に数人の参加者がいました。
ワタシの入室を確認すると、皆が一斉に
「こん」
と発言。
・・・「こん」?「こん」とは如何?
なんだか皆が「こん」と発言するので、しょうがないからワタシも「こん」と。
すると、今度はやはり皆が一斉に
「どこ住み?」
と。
その時はワタシもまだピュアであったので、初対面の相手にむかって「こん」とか意味不明の発言したり、ぶしつけに「どこ住み?」とはナンだ!いいトシしたオトナとしてそういう人間関係構築スタイルはどーなんだ!などとちょっと憤ったりしたもんです。
・・・決してそんな意は表さなかったけども。
そんなこんなでチャットに参加し、いつしか「こん」とはこんにちはorこんばんはの略であることや、とりあえず相手の住まい(居場所)を聞くのはその後の話題展開において有効な手段として認知されていること、また30才代チャットであろうが小学生チャットであろうが、そういう規定に縛られることなく皆フリーに参加していること、などを知り、そうこうしながら程なくワタシもなんとなくそこの「常連」ヅラするに至ったのでした。
軽く「常連」になってみますと、またさらに色んなことが見えてきました。
見えてきたことの大半は、特段面白くもなんともない事柄ばかりだったのですが、中にはちょっと驚愕してしまったこともありまして、そのひとつが「チャ彼」「チャカノ」という存在。
・・・驚くべきことに、チャットの中限定で「彼氏」「彼女」づくりが為され、またそういう関係としてお互いを認知している男女がいるんですね。
彼氏彼女ってことは、セックス面はどーなんだ、と聞くと、これがまた「チャエッチ」というのがあるんだそうで、即ち彼らはチャットの中において、チャットの中でなりの「性交渉」に及んでいる、とのこと。
あんまりビックリしたんで、それをどうやって遂行するのかは聞き漏らしました。
で、さらに驚いたことに、チャット内での浮気、もしくは「不倫」という概念も存在するのだそうです。
もっともっと驚いたのは、チャットというバーチャルな「世界」で、やれ彼氏だ彼女だ浮気だ不倫だってやってるのは、おそらくは人間関係構築能力の未熟な、また社会生活経験の希薄な若年層が主なんだと思ったら、むしろ30歳代以上がほとんどだったりしたんです。
これはある30才代後半の女性なのですが、
“今、○○チャットにいる××さん、私の元チャ彼なの”
“でも、ちょっとストーカーされちゃったので、別れたわ”
・・・チャットにおける「ストーカー」行為って、いったいなにをするんだろうか?
と聞くと、
“あのね、私がどの部屋に入室しても、かならず入ってくるのよ”
とのこと。
イヤならチャットなんかしなきゃいいじゃねぇか、と思ったのですが、彼女はその時新たな「チャ彼」をゲットすべく、セッセと「チャ逆ナン」に励んでいるところなのでした。
“あ、そうそう・・・○○ちゃんには気をつけたほうがいいわよ”
“あの娘と付き合うと、きっと痛い目に遭うから・・・”
・・・チャットでの「痛い目」ってなんだろう?と思いましたが、バカらしくなってそれ以上聞きませんでした。
ROMる、という行為があります。
チャットには参加しないまま、そのチャットで交わされている会話をただ客観的に見る(読む?)という行為を指します。
チャット画面のはじっこに「ROM:○人」という表記がありまして、この人数が、その時そのチャットを「ROM」している人数、という次第です。
往々にして、チャットに励む人たちは、ROMられる事を嫌う人が多いようでした。
参加もせずに人の会話を盗み見して、プライバシーの侵害だ!だそうです。
「インターネット」上での発言であり、またこのチャットではリモートホストも公開されていたのですが、そんな状態でプライバシーもクソもねーだろ!と思うのですが、言わなかった。言えなかった。
あるときは、ある人が、ROMってる人に対し、
“あんた、いつまでもそうやってROMってるんだら、ハッキングするよ!?”
・・・全く意味がわからなかったのですが、要するに自分の意に反してROMを続ける誰かに対して、オマエの個人情報をバクロしちゃうぞ!と、まあ脅しをかけてるわけです。
それじゃ普通に犯罪じゃねーか、と思いましたが、言わなかった。言えなかった。
・・・上記は、いずれも30才代中~後半の人たちにおけるエピソードでした。
あと目立ったのは、エロ目的・・・それもあからさまに中高生女子を狙ってるオッサンとか、どうやら風俗関係の女性(彼女はチャ彼を2マタ、3マタしてるとかいうことでした)、そんなところです。
傾向としてハッキリ出ていたのは、若年層利用者は結構ライトに、あくまで単なる遊びのひとつとして気安く理容している感じでしたが、30才代以上の参加者は非常にコアというか、もうドップリというか、とてもバーチャルな世界での関係とは思えないドロドロさだったりする人が多かったです。
印象的な出来事というか、邂逅をひとつ。
あるとき、鳥取にお住まいの中学生の女の子と「会話」したことがありました。
2000年に「鳥取県西部地震」がありましたが、この時彼女は小学1年生だったそうです。
ちょうど昼休みが終わり、それまで登っていたジャングルジムから降りて、ちょっと校舎に戻りかけた時にグラッときたんだとのこと。
かなり激しい揺れだったようで、“ちょーびっくりしたー!”とかいう感じで無邪気に往時を語っていました。
彼女は無邪気に話していましたが、いいトシのオッサンであり、おそらく彼女のご両親と同世代であるワタシとしては、地震発生時の彼女のお父さんお母さんのお気持ちを考えると、ちょっといたたまれないというか、複雑な気持ちでした。
あの辺りはそれほど地震の多くない地域でもあるし、なにより我が子を新1年生として送り出し、そんな折に大地震、って、さぞかしご心配だったろうなぁ、と。
しかしその娘はそんな親の気持ちに気付いている様子も無く、ただただ無邪気のそのときの事を話していました。
あ、あと、そういえば高校2年の男の子に、恋愛指南したこともあったっけなぁ。
大学進学したら遠距離恋愛になるとかいう事で、どうすればいいんだろう・・・とか。
この時は答えに窮したのでよく覚えてます。
考えてみれば、男女問わず、20才以上年齢の離れた人と、かなり対等に「会話」できるというのは、チャットの大きなメリットのひとつかもしれません。
ただこの「メリット」は、非常に悪用の容易いものでもあるので、やっぱし子供にはあんましチャットさせちゃいけないなぁ、と。