携帯小説に挑戦する。

ホントにこのサーバはボロい。当ブログにエントリーをひとつ・・・さったひとつ追加するだけで、反映されるのに大げさでなくマル一日かかります。
安かろう悪かろうとは正にこのことですが、それはともかく表題の件。挑戦するったって自分で書くわけじゃありません。携帯小説なるものを呼んでみよう、ってわけです。
よくわからないが最近なんだか流行ってるらしい。そういう「流行ってるもの」を、よくわからないままにしておいてはいけない、という志向に拠ります。
なお、当エントリー内に出てくるサイト名、作品名などは全て仮名です。念の為。


なんで挑戦・・・読んでみようと思ったかというと、事の起こり?は昨年末に遡ります。
某文筆業のT氏に、氏と同業の方々が集まる、という忘年会に誘って頂きまして、そこでの皆さんの会話がきっかけでした。
ぶっちゃけてしまいますと、皆さん「携帯小説」というものには、あまり積極的な肯定をなさらなかった。
さらにぶっちゃけると、明確に否定、もしくは蔑視、さらには最初っから眼中に無い、など、もう惨憺たる評価。
同席の皆さんは総じて一流の方々で、文章のプロでらっしゃる。
そういう文章のプロからみたら、確かに素人、もしくは比較的素人寄りの作者が多いであろう携帯小説という分野は、とりあえずリスペクトに足る対象ではないのだろう、それはその席上でもよく理解できました。
しかし、現実として、携帯小説を原作とした映画もなんだかヒットしちゃったりしてるし、単行本化された諸作品も多く、またそのうちのいくつかはかなりのセールスを記録している、これも事実。
ヒットし、高セールスを記録してるということは、確実に多くの支持者が存在している、ということに他なりません。
それら諸作品は、いわゆる既存の「プロ」の手に拠る作品ではない。
このことも、まごうかたなき事実であります。
当サイト管理人も、一応、恥ずかしながら、「制作」における「プロ」の末席を汚す身です。
プロとはなにかというと、自分の作ったモノを売ってオアシを頂いてる人または集団。
しあkるに、この携帯小説では、既存の「プロ」ではない人の手によってモノされ、にも関わらずかなり多額なオアシを生み出している。
当サイト管理人は文章で食ってる身では無いものの、「プロ」の末席を汚す身として、これは一度読んで見なければいけません、と。


さて、携帯小説とは、一体どこにあるのか。スタートはここからでした。
「携帯小説」っていうくらいだから、携帯端末から閲覧できるサイトにあるんだろう、ということで、とりあえず汎用とされる携帯検索サイトから、「携帯小説」で検索してみました。
そしたら、あるはあるは。もうナンボでも出てきました。携帯小説の載ってるサイト。
パッと目に付いたのは、大体2種類。ページ上にテキストとしてまとめられているものと、いわゆるBBSのスレッドとして書かれているもの。
ここから、より「素人」スタンスの方でも参加しやすいであろう、BBS形式のものをクリックしてみました。
そのサイト(BBS)では、実に数十人の方が、自分のスレッドを持ち、そこへの書き込みという形態で自作を「連載」していました。
で、BBSですので、それぞれのレス(章・段落)ごとに、不特定多数の閲覧者(読者)によるレスが付いています。
で、数十あるスレッド(=作品)のうち、よりレスの多い作品が、一覧の上位に提示されています。
この時一番上に提示されていたのは、実にレス数50。
2番目のスレッドには7、8つしかありませんでしたから、このサイト内ではズバ抜けた人気作品と言えるでしょう。
さっそくこの作品を読んでみることにしました。
 
 
タイトルは洋子との失われた数ヶ月」
具体的なんだか抽象的なんだかよくわからないタイトルですが、なにしろこれがダントツ人気No.1作品なわけです。
俺が洋子を失ってからもうすぐ1年になる。
俺は今、猛烈に公開している。

この作品は、この「俺」の独白として綴られています。
書き忘れましたが、全て原文ママです。
「公開」は、文脈から「後悔」だと思われます。猛烈に公開したら場合によっては逮捕対象になります。
それはともかく、なんだか巨人の星っぽいなぁ、と思いながら、さらに読み進めました。
 
 
俺のあの一言で、陽子は猛烈に傷ついた。
俺のあの一言がなければ、陽子はあんなに悲しむ事は無かったと思う。
俺はどうしてあんなことを言ってしまったのだろうか。

タイトルでは「洋子」でしたが、本文中では「陽子」表記が多かったです。多かった、というのは、時々「洋子」表記も出てくるからです。
しかし、「陽子」も「洋子」も同一人物のようでした。
なお、この主人公の男が「洋子」に一体何を言ったのかは、最後まで描かれません。
 
 
・・・このBBSでは、大体400文字で「次ページ」になるのですが、ずっと引用してもいけないので、下記に、4ページ目までを要約します。
 
・主人公の男は、「洋子」と付き合っていた
・しかし、男の「ある一言」で、洋子は大層傷つき、その結果2人は別離、となる。
・男は洋子との別離を悲しみ、また大変後悔している。
・で、洋子もきっと後悔しているに違いない、と思う。またその理由がつきあっている間のエピソードも交えて語られる。

・洋子と出来ればやり直したいが、そもそも別離の責任は自分にあるので、男は悩み、迷う。
 
 
こういう彼の葛藤が、4ページに渡って綿々と語られます。
で、その末・・・4ページ目の終わりで、男は決心します。
 
 
俺は決心した。俺は生まれ変わって陽子をむかえよう!
二度と陽子を苦しめたりしない。
二度と陽子を悲しませない。
俺は生まれ変わったのだ!
 
 
・・・特に、彼が生まれ変わるきっかけになるような具体的な出来事などは明示されません。
全て彼の内的な変遷によります。
とにかく、彼は悩み苦しんだ末に、やっぱり洋子とヨリを戻そうと決心したわけです。
ふとした何気ない一言で彼女を傷つけてしまった。しかし俺は彼女をまだ愛してる。だから、もう一度彼女とやり直そう・・・彼女が許してくれるなら・・・いや、彼女に許してもらうために、そしてもう二度と彼女を傷つけたりしないように、彼は生まれ変わり、決心した、と、ここまでが4ページ目までのあらましです。
 
 
そして、5ページ目の冒頭。
 
 
 
しかし、洋子はもうこの世にはいない。
 
 
 
 
 
 
は?
 
 
 
 
 
 
なに?
 
 
 
 
 
 
どういうこと?
 
 
 
 
 
・・・どういうこともヘッタクレも無く、実は洋子はハナから死んでたのでした。
 
 
俺は生まれ変わったが、洋子はもう生まれ変われない。
俺はもう失われた洋子との日々を取り戻す事は出来ない。
そう、俺はもう洋子とはやりなおせないのだ!

・・・当サイト管理人的には、なんだ、最初っから死んでたのかよ、じゃあ今までの4ページはなんなんだよコノヤロー、という感じだったのですが、なにしろ作品は、計8ページ・・・このあと4ページほど費やして、いかに彼が後悔しているかが語られて、そのまま終わります。
 
 
で、この作品に対するレス・・・閲覧者の読後感想ですが、50もレスがついていたので、みんなモンク言ってるのかと思ったらさにあらず、
・感動しました・・・
・切ないストーリーですね
・まさか洋子さんが死んでいるなんて思いもしませんでした(※このリアクションは同感)

という感じで総じて好評のようでした。
 
 


で、読後のあくまで私見ですが、冒頭に記しました諸氏の意見に私もほぼ賛成で、まさか携帯小説というのがこんなんばっかしなわけじゃないよね?という疑念というのか不安というか、そういう感情もありました。
活字離れとか言われますが、決してそんなことは無く、こんなアホらしい「携帯小説」でも、多くの人がそそれなりの満足とともに読んでたりするわけです。
活字離れどころか、むしろ若年層は活字に飢えてる・・・正確に自分らの訴求に対応している活字作品を渇望してるんじゃないか、と思いました。
もしそうだとしたら、これは出版業界におけるマーケティングの失敗に他ならないわけで、業界の方々はちょっと真剣に考え名なきゃいけないんじゃないか、と思った次第です。