長谷川が10度目防衛=4回TKO-WBCバンタム級
http://www.jiji.com/jc/c?g=spo_30&k=2009121800913
というわけで、チャンピオンの長谷川穂積(真正)の実に10度目となる防衛戦は、挑戦者で同級9位のアルバロ・ペレス(ニカラグア)に4回2分38秒TKO勝ち、見事10度目の防衛に成功、という結果になりました。
・サウスポーの利点を十二分に理解し且つ生かした、伸びの良い左ストレートと右フックがあり、
・接近戦では肩の回転を利かした連打があり、
・正確且つ冷徹な防御感があると同時に、
・「攻撃」→「防御」若しくは「防御」→「攻撃」にブランクがない=完成度の高い「攻防の一致」があり、
・なによりも左右のどのパンチにも一発で倒せる破壊力がある。
・・・これで勝てないはずがありません。
表題の通り長い事この競技を観ていますが、特にここ数戦の長谷川ほど「完璧」なボクサーは記憶にありません。
唯一の欠点が(私見ですが)、やや、ホントに微妙にスロースターターな傾向がある、という部分で、実際この試合も立ち上がりはエンジン全開でやや変則にパンチを振ってくる挑戦者のリズムを読みきれずに硬くなってた節がありましたが、4Rにいくらか見切ってきたかな、と思った途端に「失神KO」で勝利。
少なくとも現在のバンタム級においては、長谷川の王座は磐石も磐石、この階級に留まるのであれば、しばらくは今日のような試合が続くことになるでしょう。
(初回KO勝ちを続けていた長谷川をスロースターターとすることに異論もあるでしょうが、だいたいいつも長谷川の1R、2Rあたりはやや硬いです。ワンパンチで勝っちゃってるので目立たない&無意味になってますが)
この試合、記事では
> 強烈な左のダブルで沈めた
とありますが、正確に言うとあれはワン、ツー、スリーのスリーですね。ツーが非常に軽く浅い形で出されていますので事実上左ダブルになってますが、まぁ厳密にいえば3連打の最終打。
このことが正に現在の長谷川のスゴいところです。
この試合、KOシーンまでの長谷川の攻撃は、左を打ったら返しの右が続いて、その上でまた左、というパターンでした。
ですので、4RのKOシーンにおいても、当然ながら長谷川の左がまず飛んで来た際、ペレスの意識は(ある意味習性的に)その返しの右パンチへの防御という部分に向かっていたわけです。
しかし、実はこのとき、長谷川の放った2発目の右は、ホンの軽いフェイント・捨てパンチでしかなかった。
その結果、2発目の右に(結果としては必要以上に)留意していたペレスに、その意識が行き届いていない左パンチが決まってしまった、と。
・・・ある意味、1~3Rの戦い方が、結果として全てKOシーンへの複線になってしまってる、という次第です。
それも、ああ、長谷川、ようやくペレスのリズム掴んできたかな、というくらいの段階でこれが出てくる。
こんなことやられたら誰も勝てません。
ペレス的には左右ボディストレートへの警戒もあったろうし、肩越しに飛んでくる左ロングフックへの意識もあったろうと思います。
ついでに言うと、長谷川も前述の左ロングがもう少し(カウンターで)決まるかな、と思ってた節もみえたし、スピード豊かで、死角から飛んでくる左右フックにややとまどいの色も見えました。
そういう中で、当たり前ですがペレスにはペレスの、長谷川には長谷川の「組み立て」があったと思うのですが・・・長谷川の試合後コメントにもありましたが、「KOできるチャンスがあればいつでも行く」という姿勢、これが他全てのアルゴリズムに優先された、という次第です。
しかしまぁ、このバンタムという階級で、ワンパンチ失神KO、なんてのは、そうそう観られるものではありません。
オリバレスやカオサイも確かにワンパンチの威力はありましたが、KO勝ちの多くはやはり詰めの連打に拠るものが多かったです。
しかしながら長谷川は、もう紛う方無きワンパンチKO。しかもそれがこの試合だけでなく、どころか計10回の防衛戦の殆どがそうである、という。
長谷川の「連打」、その鋭さやスピードには定評がありますが、彼の場合は全てその後の「ワンパンチKO」に持っていくための手管としての連打、だったりすることが多いです。
さて長谷川、場合によっては次戦以降は2階級ほど上げてフェザー級での試合になる公算が強いそうですが、この階級でも最初に記したような「長所」が生かせるかどうか。
ここに注目したいところです。
2階級上げたらパワーも雲泥の差、と思えるのですが、パッキャオなんかは9階級(!)上げてなおKOで世界王座に着いたりしてますからね。もはやこの競技には「絶対」は無くなってます。
長谷川には大いに期待します。