黒澤の「赤ひげ」において、佐藤勝はハイドンやらブラームスやらから盛大にパクりまくった、などという不埒不遜な見解に対して、今オレは大いに憤っております。
ただまぁ事情を知らなかったらそう考えてしまうのも宜なるかなで、要するに「赤ひげ」内の、例えばメインテーマは完全にブラームスの交響曲(何番だかは忘れた)だし、長坊が出てくるテーマはハイドンの「驚愕」(正式名称は知らない)にクリソツです。それはまぁ事実そうなんで、そこのところには抗いません。
でもね、と。
有名な話ですが、黒澤は作曲家に発注?する際、例えば「ベートーベンの第○みたいな曲を」というようなことを言ってきたそうで、さらに確かこの「赤ひげ」のときは、実際にベートーベンの第九だかに合わせて編集した映像素材をみせて、こういう風にしたいんでよろしく、と言い放ったとか。
初めてこのエピソードを知った際、オレは引いた。引きました。ドン引きでしたね。逆の立場だったら顔面蒼白茫然自失、恐らく怒りも忘れて忘我の境地、です。
少しでも、単なる収録物ではない「映像編集」をやったことのある方なら、これがどんだけムチャな要望かおわかりになると思う。音楽の旋律・小節に映像を合わせてつないで、それでバッチリだってんなら、もうその曲を使ってもらわなきゃどうにもなりません。ちなみに武満徹は「乱」だかでやはりこれをやられて、「オマエとは金輪際仕事しないぜ!」となった由。そりゃそうでしょう。さすがにやってられませんこれはね。
で、こんな想像を絶するムチャ振りに対して、よくもまぁ佐藤勝はこんな名曲をモノしたもんだなぁ、と感嘆する次第です。スゴすぎます。
そして、作ってる立場のことも考えずに、安易にパクっただナンだというヤツに憤るのです。
ということで、明日はいよいよ納品です。