岸田森のようなどこか様子のおかしい役者さんについて。

円谷プロ制作の「怪奇大作戦」にハマってた時期がありました。なんでハマったのか自分でもよくわかりませんが、第一話から順に観て数周したと思います。「怪奇大作戦大全」みたいな本も買ったりしました。

ご承知の通り、「SRI(科学捜査研究所)」なる組織が怪事件難事件を解決していくというお話ですが、このメンバーの中にちょっと様子のおかしい人がいるのです。どこがって言われると説明が難しいのですが、なんかおかしい。どこか様子がおかしい、としか言いようが無いのです。

物語の構成としては若くて沈着冷静なイケメンサイエンティストということなのですが、まぁそれはその通りでありつつ、やっぱしどこかおかしい。妙なのです。

調べたらこの役をやってたのは「岸田森」という俳優さんでした。

「帰ってきたウルトラマン」でも、自動車修理工場の主人だかなんだかの役をされてましたが、こっちもなんかおかしかった。主人公の頼れるカッコいい先輩という役どころなはずなのですが、やっぱりどこか「様子がおかしい」感じでした。

今だと誰になるんかなぁ。竹中直人とか香川照之なんかはいわば「様子のおかしさ」が一種のウリだったりするじゃないですか。岸田森さんのおかしさはもっとそこはかとない感じですよね。上記2作においても役柄としてはあくまでもイケメン枠であって、にも関わらずどこかイカれてる、どこかが妙だ、という。

ほんとはこんな様子のおかしい感じじゃダメなはずの役柄で、なのにそんなどこかおかしい感じのままでちゃんと成立させている、という、そういうところが魅力なわけです。

70年代中頃くらいまで、この手の「どこか様子がおかしい」役者さんってのが我が国には多くおられたように思います。

例えば三島雅夫さん。東映時代劇では町人、農民から大大名まで、大袈裟でなくありとあらゆる役柄をこなしておられますが、どれもこれも、なんかどこかイカれてるというか、やっぱり「様子がおかしい」のです。どんな役をやってても、いきなり笑いながらひとを刺し殺しそうな感じがあります。

※余談ですが東映「ゆうれい船」では、50歳代前半でありながら13〜14歳の役をやられてます。いやぁこれはすごいです。でも不思議なことに5分くらい観てると、まぁそんなもんか、みたいな感じになります。その辺が名優たる所以なんですかね。

田中春男さんもいろんな役をこなしておられますが、なんかどこまでいっても「ホントは全部ウソなんじゃないか」と思わせられる感じがあります。本来役柄としてそれじゃダメだろと思えるところですが、むしろそういう感じが魅力的なのです。「浮草」なんかスゴかったです。

……考えたらこんなの挙げ出したらキリがないのでやめますが、往時にはこういう、場合によっては役柄から逸脱するイカれた感じを保ちつつ、それを補って、いやむしろそのことによって役柄の魅力をブーストさせちゃったりするような役者さんがポツポツおられたように思います。

あの頃はまだ日本国自体にまだイカれた感じがあったんでしょうね。今はあの時期に比べたら、なんのかんの言ってもずっと成熟してますよ。

それでも、今だってああいう「様子のおかしい」感じの役者さんはきっとおられるのだとは思います。

でも、世に出にくくなってはいるのかもしれません。知らんけども。