内藤、亀田、ポンサクレック(亀田VSポンサクレック観戦記)。

2010年3月27日に行われたボクシングWBC世界フライ級タイトルマッチ、同級王者の亀田興毅と暫定王者ポンサクレック・ウォンジョンカムの一戦は、2-0(114-114、116-112、115-112)の判定でポンサクレックの勝利となりました。

・・・老いたりといえどもポンサクレックに一日の長あり、です。全盛期には及ばない出来で、さらに「不幸な」バッティング減点などあったりしたものの、
やはり亀田のような正直なスタイルの選手には磐石。どうやられても、どう動かれても、絶対に負けない、という坩堝に、亀田をいとも簡単に引き込んでしまい
ました。

前述しましたが、ポンサクレックも小松戦などの頃、いわゆる全盛期と比べると衰えが目立つちました。大き目の左ストレートを打つ際にややバランス
が乱れる感じがありましたし、亀田の非常に雑な右ジャブ連打を捌ききれずに下がってしまう場面もしばしば。

ただ、そういうフィジカル面の衰えを補って余りある、非常に老獪な、正に「職人芸」を見せてくれました。


落語なんかの世界でよく言われるそうなんですが、いわく「芸術とは須らく無駄の排除」、無駄な要素をトコトン切り取って搾り取って、その末に残っ
たもの、これこそが真の芸術である、と。

そういう意味で、今回ポンサクレックが提示してくれた「作品」は正に芸術。亀田という素材を活用した類稀なる芸術作品、という趣でした。本当に全
ての動きに無駄が無い。自分が居るべき場所に立ち、然るべきタイミングと角度でパンチが出される。

繰り返しになりますが序盤で「不幸なバッティング減点」が無ければ、恐らく8、9Rあたりで倒してしまったでしょう。

相対した亀田は、やはりキャリア不足・・・考えたら世界王者で「キャリア不足」ってのもヘンな話ですが、ポンサクレックと比するとその差は歴然で
した。

以前から言われていることですが、なにしろ攻守とも引き出し、パターンが少なすぎる。右リードパンチひとつ採ってみても、右にサイドステップしな
がらか、そのまま真っ直ぐにか、殆どこの2パターンしか無い。

こういうのはもはや亀田の責任ばかりではなく、真っ当にキャリアを積ませなかった彼の取り巻き連中が悪い。なにしろランダエタ初戦、内藤戦、そし
て今回の試合くらいしかマトモな相手とのマトモな試合がないんだから、これはもう亀田本人ばかり責められません。

 

 

さて、さっきから書いてます「不幸なバッティング減点」ですが・・・TBS実況で言われてましたが「偶然のバッティングで負傷した場合、負傷させ
た選手は減点される」って、こういうルールがあるんでしょうか。いつのまにこんなルールが?とまれ、なにしろポンサクレックは、この減点で戦法の転換を余
儀なくされた感じでした。

あの減点までのポンサクレックの試合組立計画は、間違いなく8、9RあたりまでにKOする、というものだったはずです。それに向かって全てを構築
していた、と容易に想像できるものでした。

計画通り亀田を追い詰めて行った途上の「減点処分」だったわけですが・・・あれで簡単に減点取られたってことで、陣営としてはこのままこういう形
で攻めて行ったんじゃヘタしたら反則負け取られちゃう・まぁそうならないとしても厳然と不利になってしまう、と考えたでしょう。

ここからのポンサクレックは、明らかに安全策にシフトチェンジしていました。即ち「絶対にバッティングを取られない方策で勝つ」という。

その結果が、この「大差判定勝ち」です。

実は内藤戦でも似たような状況がありました。

あの試合、4R終了時の採点で、内藤は2、3ポイントのアドバンテージを考えていたと思います。それくらい1~4Rは内藤ペース、ほぼ内藤陣営の
狙い通りの試合展開でした。

しかし、実際は全く逆。ジャッジほぼ全員が亀田リードにつけていました。

これで内藤陣営は、それまで完璧だと思って履行していたシナリオを急遽書き直さなければならなくなり、結果いろんな事柄が狂ってしまった。

その末が、あの「大差判定負け」です。

うまく試合計画を転換できたポンサクレックと、それが叶わなかった内藤。

この差は、もう「運」ですね。それだけです。内藤よりポンサクレックが上手いとか、そういう次元の話では無い。

ところで、これでもしかして、ポンサクvs内藤戦が実現するんですかね。

もし実現したら、内藤のコンディション次第・・・亀田戦くらいの仕上がりであれば、これは内藤が有利なんじゃないか、と思います。

ポンサクレックは、内藤のようなスタイルは苦手です。彼の唯一の苦手タイプが「内藤スタイル」です。エデル・ジョフレにおけるファイティング原田
みたいなモンです。

ああ、もしかしてもしかして、次戦で内藤が勝利戴冠、そして大晦日に内藤vs亀田、なんてことになったりするんですかね。

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