もう15年も経つんだなぁ。当時のワタシの彼女は、吉原はソープランドで働いてたんですよ。
いわゆる「姫」ってやつですね。
そもそもの馴れ初めは単純で、ワタシが客で、彼女はワタシのいわゆるオキニだったんです。
オキニって言っても、客と姫という関係で会ったのは最初の2,3回だったなぁ。
不思議なもんで、どっちから言うともなく、普通に付き合うことになったのでした。
なにかっていえば、早く(風俗を)辞めたい、辞めたい、って言ってたっけなぁ。
ちょっと心が折れてるようなとき、決まって出てくるのがこんな言葉達でした。
で、やはり決まって続くのが
“でも、アタシにはこれしか出来ないからね・・・”
・・・当時彼女は25歳で、中学もロクに行かず、17歳くらいからトシごまかしてお水や風俗にドップリ浸かってたので、
“今更まともな就職なんか出来ないし・・・でもこんな仕事してても、ねぇ・・・”
そう寂しげに言うんだけども、究極的にはワタシに出来る事はなにも無いので、ワタシとしてはそんな彼女をただボケーと見てるしか仕様が無かった。
そんな感じで全くやる気の無い姫で、出勤も月に3、4日だったにも関わらず、なんだか知らないけど人気者で、そういやワタシが最初に指名したときも数時間待ちとかだったっけなぁ。
風俗嬢はお客のオトコを、、1本、2本、って数えるんだ、とか、客との会話は別れた途端に忘れるけど、また来た時にだけ思い出す、とか、フェラするより本番されてた方がずっと楽だ、とか、そんな話を教えてもらったのも彼女からだった。
元々が客と姫だった、つまり、最初っからSEXありきで始まった人間関係だったので、付き合ってからは、まぁSEXもしたことはしたけれどもw、それはあんましお互いにとって重要な事じゃなかった。
SEXに持っていくためのみょうな駆け引きなどとは最初から無縁で、それだけある意味ピュアな関係だったのかもしれないな、と。
そうこうして・・・付き合って2年目くらいに、彼女のお父さんが、転んで下半身付随、ほぼ寝たきりになってしまった。
誰かが世話しなきゃならない、でも、寝たきりの高齢者の世話ってのは大変なものです。
シモの世話から、清拭、etc。
でも、さすがに彼女は、やたらそれらが上手かったらしい。
普段からオトコの体洗うのは慣れてるから、ってことでw
ヘルパーの人に、Y子さん、あなたお上手ね~!って、やたら誉められたらしい。
で、ここで彼女はハタ!と気付いた・・・らしい。
これなら、学歴もキャリアもなんにも無くてもできるかも!と。
かくしてこの時期、彼女はソープを辞め、いわゆるヘルパーのバイトをセッセと始めたのでした。
収入は1/10になったらしいけど、なんだか毎日バタバタ働いてました。
・・・その後2年くらいして、まぁいろいろあって我々はお別れすることになりまして、ここで、そうか、あれからもう15年経つのかぁ、という冒頭の一節に至るわけです。
15年前の事柄について、なんで今さらワタシが感慨に耽っているのかというと、新宿は靖国通り沿いでもって、もうホントに奇跡的に、バッタリ彼女に会ったんです。
15年経ってお互い老けてはいましたが、不思議なモンで、一目でわかった。向こうもそうだったらしい。
とりあえず喫茶店など入りまして、話を聞くと、驚いた事に彼女は某県某所で、高齢者介護事務所の社長になっていたのでした。
ワタシと別れたあとも介護の仕事を続け、そうこうしてる内に介護保険制度なんかが整備されたりして、あれよあれよという間に資格取得、独立、事業拡大、と。
そんなに大きな事務所じゃ無いらしかったけど、なにしろ今や社長さんなのであった。
まだお互い独身であったけども、2時間くらい喫茶店で喋っただけで、お別れしました。
決してまたホテル行こうかとか、そういう展開にはならなかった。
なんというかあまりにもノリが昔のままだったので・・・。
別れる間際くらいに、彼女は言いましたよ。
“ソープも、この仕事も、アタシに言わせりゃ似たようなもんよ。”
“でもね、ひとつだけこっちの方が楽だな、って事があってね。”
“それはね、年寄りは、フェラさせろ、とか言わないからね!”
・・・ああ、おまえさんは、ホントに変わってないねぇ。
オレはなんだか無性にうれしいよ、うん。
・・・かつてソープ嬢だったってことを知ってるワタシが、あんまし周囲をウロウロしたらいけないだろう、ってな配慮でもって、あえて名刺etcは受け取りませんでした。
もうホントに、また奇跡でも起こらない限り、ホントにもう二度と会うことは無いと思うけど、彼女はきっと死ぬまであのままだろうから、極めて普通に、じゃあね、と。